FTMの乳房切除(胸オペ)に関しては、いくつかの手術方法があります。

胸にたるみがなければ、まず最初に、乳輪辺縁の下半周を切開(U字切開)して、そこから乳腺組織を取り出します。
※胸オペ=乳房切除、乳腺摘出術

次に、乳首の縮小を行います。なぜいっしょに行わないかというと、U字切開によって、乳輪がいくらか変形するかもしれないからです。新しい小さい乳首はできるだけ中央に位置した方がよいでしょう。

胸の下垂があるときには、多くの胸の余った皮膚を切除する必要があり、どうしても長い傷跡ができてしまいます。

多くのアジア人は、胸の傷跡が目立ちやすいので、傷跡はできるだけ小さくすべきと考えます。

胸オペの対象と方法

FTM29人の胸オペを対象にしています。今回使うオペテクニックは、胸に下垂がない人向けです。
すなわち、最初に乳腺組織を取り除くことです。

乳輪辺縁下半周を三日月状に切開して取り除きます。このとき同時に乳首縮小は行いません。

最初の乳腺摘出後から1か月以上以降に乳首縮小を行います。
最初の手術後にできる傷跡(瘢痕)によって乳輪が縮まることにより、乳首が中央に位置しないことがあります。

必要があれば、目立つ傷跡の場合は、修正を施し、新しい乳首はできるだけ乳輪の中央に位置するようにすべきです。

胸オペの合併症

  • 血腫1例
  • 止血による小さい皮膚のやけど1例
  • 乳首の部分的な壊死3例
  • 乳輪表皮の血行不良1例
  • 乳輪周囲の皮膚の余り1例

血腫時には、再手術が行われた。乳首をもっと平たんにしたい場合には修正を行った。乳輪の表皮の壊死に対しては、タトゥーによって治した。

皮膚が余ったケースでは、そのたるみを乳輪の周りをドーナツ状に余剰の皮膚を切除した。

考察
FTMに対しての乳房切除(胸オペ)は、いくつかの方法が試みられています。アジア人は、重度の下垂の胸はそれほど多くないので、胸オペには、小さい傷跡で行う方法が有効です。

乳房が大きく、下垂があるときには、長い傷跡が残ってしまうことが避けられません。

しかしながら、胸の傷跡はアジア人にとって目立つので、傷はできるだけいつも小さくなるようにすべきでしょう。

胸オペと乳首縮小を同時にしない理由

乳首に行く血流が少なくなるため壊死になる可能性大

多くのFTMが乳腺摘出術と乳首を小さくすることを同時に希望するのですが、分けて行うことを勧めます。

なぜなら、初回の乳腺摘出術時において、乳輪もしくは乳首に行く血行が少なくなるので、壊死になる可能性が少なからず生じるからです。

また2回に分けて行う理由は、初回の胸オペで、乳輪の輪郭が縮小することによって多少変わるからです。

もともとの位置も中央でないことも多く、手術するとなおさら位置が変わることがあるのです。術後乳首の位置が中央にないときには、2回目の手術のときに、中央に寄せればよいのです。

1例では、乳輪の部分的な壊死を生じました。これは、この場所に行く血行が少なかったからです。1例では、血種を生じました。また、2例で電気メスによる止血による皮膚のやけど
を生じました。

なぜならば、切開範囲がかなり狭いこと、止血はやけどを防止するために最大の注意を払うべきです。

このような血腫とやけどはできるだけ避けたいところですが、それでも生じることがあります。

我々がこの手術(胸オペ)する前には、下垂がなくても、少なくとも胸を平らにするには、余った皮膚を生じてしまうと考えていました。

下垂のない乳腺組織を摘出したときでも、胸の皮膚は考えている以上に収縮することを理解しました。

とりあえずは、U字切開で!
患者の乳首が、乳房の下溝の上に位置するときには(下垂がない)、乳輪下半周切開を行った。多くの症例では、治療には、この方法で十分である。

※海外の症例報告では、下半周切開の適応であろう症例でも、しばしば傷跡が目立つ方法が取られることも多い。

乳首が乳房下溝にある位置する症例(軽度下垂)では、術後乳輪周囲に余った皮膚が生じた。そのため、乳輪周囲にドーナツ状に余った皮膚を切開した。

アジア人は胸の傷跡がたいへん目立つので、多少の余った皮膚、皮膚のしわは多少目をつぶっても、傷跡はできるだけ小さくするべきである。
※患者さん次第というところでしょうか・・・。

コメント
2006年の胸オペに関する医学論文です。すべて胸の下垂がない症例に対する報告でした。

ポイントは、
・乳首・乳輪に行く血行が少なくなる理由から、乳首縮小は、胸オペと同時にでなく、後日改めてオペした方がよい。

・アジア人は、傷跡が目立ちやすいので、多少の皮膚の余り、しわが多少残ってでも、できるだけ小さい傷跡で行う乳輪下半周のU字切開で行う方がよいことです。

当院の胸オペの方針としても、乳首、乳輪に行く血行はかなり減少するため、単独で行うよりも壊死の可能性が高くなるため、患者さんにとっては面倒かもしれませんが、安全策として2回に分けた方が無難と考えています。

また、U字切開では皮膚のたるみ、しわを生じるかもしれない胸の下垂が微妙なひとでも、とりあえずは、傷の一番小さい方法で行う方がよいと考えます。

術後にどうしても皮膚の余り、しわがどうしても気になるようでしたら、乳輪の周りをドーナツ状に余った皮膚を切除すればよいと思います。

今回の海外医学論文の要訳
Chest Wall Contouring for Female to Male Transsexuals
Ansth.Plast.Sug.30:206-212,2006